教師生活数十年、日本語教育に情熱を注ぐ金塚さんに聞く
栃木県で足利市を中心に小学校等で先生をやられておられた金塚さんは、プーケットに移り住んだ動機についても補習校の存在が大きかったといいます。現在の補習校の問題点や今後についていろいろご意見を伺いました。
補習校に通ってくるお子さんには、宗教や家庭の事情、帰国するかもしれないと思っている親もいれば、ずっとここで暮らしていこうと思っている親もいます。そういった様々な子供たちが集まってくるわけですから、補習校も、学校としてバックボーンとなるものは何か、心をどこに置くかをしっかり決めておかねばならないと思います。
私は、タイ人とか日本人に関係なく、子供たち同士がお互いを認め合う心が一番大切だと思っています。相手のいいところは学び、そして支えあう。学校とは、そういう場であるべきだと考えています。
また、学校は勉強を教える場所ではなく、勉強の仕方を教えるところだということも忘れてはいけません。勉強は忘れても、勉強の仕方は忘れません。物の見方、考え方を教えることで、それがお互いを認め合うことにつながります。子供たち同士で、「~さん、よく分かったわね」「~くん、すごいなあ」とお互いに認め合うようになるのが理想です。相手がタイ人でも、日本人でも、みんな教え方は同じですね。
それと、大切なのは集中力です。例えば、ある本の、あるページを書写させるとします。普通にやらせると、20分かけて半分も終わらない子もいますが、「じゃあ10分でやって」と条件をつければ、だいたい10分でできてしまうものです。無駄な時間を使わせないことも大切ですね。
また、先生方の講習も必要だと思います。お母さんたちのボランティアが中心で、未経験の方がほとんですが、月に一度、1時間の講習でも、ずいぶん違うと思います。少ないながらも謝金が出ているわけですから、先生方がもっと勉強する機会を与えてあげるべきだと思います。私以外にも教育経験が豊富な方もいっらしゃいましたから、そういう方の意見をもっと取り入れるべきではないでしょうか。
素人の先生だと、なかなか難しいかもしれませんが、経験があると、生徒の実力を掌握できるようになります。生徒の実力といっても、それほど細かいことではありません。例えば、ある例文を読み聞かせるとします。
1年生の子は、大体をつかむのが基準となります。うやむやだけど、なんとなく意味はわかっている。そんなレベルです。
2年生は、話題をつかむことです。何の話か聞かれたら、答えられるのが2年生のレベルです。
3年生になると要点です。「話の中心は何か」が分かるようになります。ただし、箇条書きになってしまいます。
4年生は要約です。話の中心を箇条書きではなく、文章でまとめられるようになります(段落相互関係)。
5年生では、要旨をつかめるようになります。要約した文を、「端的に言えば何か」が答えられます。例えば、「20字以内で答えよ」等の問題は5年生からです。
6年生は、5年と同じですが、より発展します。
また女児は男児より文章が得意で、男児は箇条書き的になりますから、その辺も認識しておく必要があります。そして、生徒の能力が分かる先生は、生徒を褒めることができますけど、分からない先生は、それができません。実際、補習校には素晴らしい生徒さんがたくさんいましたから、もっと褒めてあげればいいと思いました。
昨年から補習校を見てきた中で感じたのは、いろいろ問題が起こって、学校の形式や体裁を整えるのに四苦八苦していて、中身にまで手が回っていないように思います。
生まれは台湾で、10歳くらいまでいました。子供だった自分が見た(日本の植民地だった)当時の台湾を思い出すと、日本から来た先人たちが、いかに台湾のために働いたかということがよく分かります。今の台湾があるのは、日本がインフラの整備をやったことが大きいと思いますが、タイでも同じことだと思います。自分たちのためでなく、「タイのため」「タイ人のために何ができるか」、そういう考えでなければいけないと思います。
今でも、台湾に墓参に行くと、周りの人たちが日本の歌を歌ってくれます。本当に嬉しいですね。台湾には、昔の日本のような義理人情が残っていますし、架橋の教えである「信頼」が古い日本の良さと結びついています。裏切りがありません。
また、タイに来たのも、10年ほど前に台湾のライオンズクラブがチェンライに寺子屋を造ることになって、そこを手伝うためでした。しかし、生徒にはミヤンマー人が多く、それが問題視されてしまい、圧力がかかって寺子屋は無くなってしまいましたが、その後、バンコクにコンドミニアムを購入し、日本と行ったり来たりの生活をした後、知人にプーケットを進められ、移り住みました。
今は、ボランティアで近所の子らを中心に日本語を教えています。
日本語が学びたいと思うタイ人がいるのは、教育者として嬉しかったですね。学生さんらの生徒3人で始めたのがスタートです。
金塚さんの日本語教室
対象学年:小学校1年生から中学校3年生くらいまで。
曜日と時間:低中学年は平日の4時30分から。高学年は平日で時間は話し合いによります。中学生は土日でも可です。無料ですが、インク代を負担していただく場合があります。
大切なことは、私も子供たちも、共に継続して学んでいくということです。教師と子供は共に学ぶ環境であってほしいものです。教師が感動することが大切だと思っています。

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